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【ネタバレなし】映画「タッカーとデイル 史上最悪についてないヤツら」外見で判断してしまう人へ

人を見かけで判断してはいけないと言うけれど

「人を見かけで判断してはいけない。」

 

 成長の過程でそう言われた経験は誰にでもあると思います。人の外見だけで内面を含めたその人となりを判断してはいけない、という至極真っ当な意見です。

 外見で人を判断するという、差別的な行為は不道徳であると感じてしまい、我々は理性のもとに「私は人の外見を気にしません」などと言い切ってしまいます。

 

 しかし、アメリカのダニエル・S・ハマーメッシュ教授による以下のような研究結果があるそうです。

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人の容姿を5段階に分けた(5が最高、3が平均)。研究結果(計7500人調査)では男性の場合、見た目の印象がいい「5と4」の人は、容姿が平均より劣る「2と1」に比べ、年収が17%上回ったというのである。女性の場合も、12%高いことがわかった。顔、服装、髪形などの見た目が、より印象のいいほうが稼ぎはいい。これは「ビューティ・プレミアム」と呼ばれる。 

 

研究結果によると、見た目のいい人間の方が高収入だ、ということです。人は表面上、外見は気にしないと言いながら、外見と相関がなさそうな経済活動において外見の優位性が表れてしまっている、という残酷な研究結果です。ビジネスの場面において、人と人の信頼関係を結ぶことが重要です。そのためには、外見という視覚情報が重要な役割を果たしている、ということでしょう。目から入ってくる視覚情報は、耳や鼻などの他の器官から入ってくる情報量よりも多いので当然といえば当然です。

 

 

 一方で、我々は繁華街や海外の見知らぬ街など多くの人が行き交う場所では外見で危険な人物かどうかを判断しています。それは自衛のためです。つまり、人を見た目で判断するということは差別のような不道徳的な行為ではなく、我々が道徳を身につけるよりもずっと前から持っていた野生の頃からの防衛本能の側面も持ち合わせているのです。いわば我々人間がもともと持っている理性を超越した行為なのです。そう、この街がまだジャングルだった頃から。そのように考えることで外見で人を判断することもある程度正当化できそうです。

 

 しかし、我々が文化についての共通認識を持った途端に、それは防衛本能から不道徳な行為に変わってしまうのです。もしかすると、人間の脳の機能は現代の文化的な生活に適応したアップデートが未だされていないアンバランスな状況なのかもしれません。

 

 

外見により判断された悲しい男たちのコメディ

 ここに一本の映画があります。その名も「タッカーとデイル 史上最悪にツイてないヤツら」です。

 中年の主人公二人が、コワモテの外見のために凶悪な人間だと勘違いされてしまい、事件に巻き込まれていくというストーリーです。確かに作中では、サイコな二人組のような描写をされているので、人間の防衛本能によって、この二人は危険人物として認定されても全く不思議ではありません。この辺のテーマ設定においては、かつて月刊少年ジャンプで連載されていたエンジェル伝説に近いものがあります。

  

 この映画、とにかく人が死にます。しかし、中盤からはその人が死ぬというシーンですら笑えてきます。「人の死を笑う」ということは、外見で人を判断することよりも、はるかに不道徳です。しかし、この物語は笑わせ続けるために次々と人の死を見せてきます。製作陣の思惑通り、その死を見て笑い続けることになります。ある種のトリップ感を得られるとても新鮮なホラーコメディ映画でした。

 

 ちなみに最後には、必ず二度目を見たくなるような仕掛けが用意されています。

 

(評価★★★★★)

 

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